事例で示す、よく分かるリスクマネジメント入門

こんにちは。IT/経済ジャーナリストで投資家の渡辺です。

ビジネスの現場では、リスク管理、またはリスクマネジメント(Risk Management)という言葉をよく聞きます。

ビジネスに欠かせない考え方として、リスクマネジメントについて説明してみます。

注:リスクチェックシートの事例を追加しました(2018/5/9)。

おそらく業務にAIを導入する前に、このように社内にどのようなリスクがあり、どのような統制があるのかを評価するプロセスが1回はあるのではないかと思います。

リスクの定義

日頃の忙しい業務に追われているとあまり意識しないかもしれませんし、歴史のある企業になると創業者の理念や想いもだんだん薄れているかもしれません。

それでも、企業にはミッションがあり、ビジネスの目的( Business Objective)があります。

これは「●●●を通じて人々の暮らしを便利にする」みたいな大きな目標から、「20XX年までに売上100億円を達成する」、「20XX年までに市場シェア50%を超える」というような数値目標もあります。

そのビジネス目標の達成を妨げるものがリスクです。

なお、投資の世界で「リスク」と言った場合には、狭い意味でその金融商品や銘柄の決まった期間での変化の大きさ、激しさを示すこともあります。

こちらについては、別途「AI投資による自分年金研究室」で取り上げています。

<関連リンク>

【ここだけ理解すればOK】投資でいうリスクの意味

リスクをコントロールする内部統制

自社のビジネス目標を達成するためには、顧客のニーズに合う製品を開発・生産して、適切にマーケティングして販売し、注文を正確に処理して納品し、何かあれば適切なサポートを提供し、といろいろな要素が誤りなく、漏れなく、時間内に完了させないといけません。

それぞれの工程で、顧客のニーズを適切に把握できない、製造時に予算以上の原材料費が掛かって利益が出ない、製造時に不良品が出る、注文を間違える、納品先を間違える、請求漏れがある、代金を回収できない、適切なサポートが提供できず顧客満足度が下がる・・・。

その他、いろいろな角度で考察すれば、火事や地震が起きる、中核の幹部社員が急に辞めてしまうとか、他にもたくさんのネガティブな影響のある事象が想定されます。

それぞれに対して、どうすればリスクを下げることができるか、分析して必要な対応策を準備して行きます。

たとえば、上記の例で言えば、以下のような対応策が想定されます。

○顧客のニーズを適切に把握できないリスク

例)マーケティング調査や販売店への聴き取りを実施し、顧客ニーズを調べる

○製造時に予算以上の原材料費が掛かって利益が出ないリスク

例)相見積もりを取って部品メーカーを選定し、価格について覚書を交わす

○製造時に不良品が出るリスク

例)部品の納品時の受入検査、製造工程の検査で不良品がないかチェックする

○注文を間違えるリスク

例)Webサイトで受注した場合は、確認メールを自動送信して顧客に念を押す、大量発注の場合は営業部経由とする

○納品先を間違えるリスク

例)送り状はコンピュータの受注管理データベースにある受注記録から自動生成する、送り先は出荷時に担当者がダブルチェックする

○請求漏れがあるリスク

例)請求書は送り状と同様に、コンピュータの受注管理データベースから自動生成する、営業担当者が自分の担当する取引先との請求情報を月末にチェックする

○代金を回収できないリスク

例)受注確認時に、顧客の財務状況を与信情報業者などで確認する、過去の取引や支払い履歴でトラブルのないところを選ぶ、引当金や保険で万が一に備える

○適切なサポートが提供できず顧客満足度が下がるリスク

例)サポート体制を決めておく、想定されるサポート内容をマニュアル化しておく、サポート担当者の勉強会を開く

体系的に、定期的に取り組んで行く

このように想定されるネガティブな事象と、それに対する対応策が必要十分に、漏れなく整備されているかをリスクと統制の対応表などを部門毎に用意します。

また、その内容を専任のリスク管理担当部門で定期的にレビューしたりして、体制を少しずつでも強化していきます。

<リスクチェックシートの記載例>

また自分たちのセルフチェックだけでなく、内部監査や外部監査による客観的な評価を受けたりしつつ、リスク対応策が十分に整備され、目論見どおりに機能しているかを検証することもあります。

目先の業務に追われる日々ですが、少しでもこのような備えをしておくことで、組織の基礎体力を鍛えるとともに、AI導入などの変革を起こす場合にスムーズに移行できる素地を作ることになります。

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