AIの普及を阻むもの 〜ニッポンの会社が生産性を上げるには

こんにちは。IT/経済ジャーナリストで投資家の渡辺です。

日本は生産性が低いと言われます。というか、時間当たり労働生産性はOECD 35カ国中21位、1人当たり労働生産性は20位という統計があります。

参考: http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/

リンク先のPDFファイルを見ると驚きますが、何となく勤勉で真面目な日本人と対極にあるイメージのあるイタリアとかスペインより生産性は低いです。

単に人口が多いので経済規模は世界3位という数値にだまされますが、実は時間単位、個人単位で見た場合、経済力は先進国でもかなり低いのでした。

出典:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2017」

多くの優秀な方々が日々残業までして、中には健康を害したり、精神的に病んだり果ては自殺する人までたくさんいるのに、なぜ我々の生活は楽にならないのか。

この原因を考え、解消していくことが日本全体の幸福度や人生の満足度を上げるために今後必要になってくるかと編集人は考えています。

たとえば経済学や経営学的な視点で見ると、日本企業の生産性の向上を妨げるものとして、以下のような原因が考えられます。

もちろん、これだけではないでしょうし、いろいろな要素やそれぞれの会社や組織での事情や人間関係、力関係、各人の欲や思惑が微妙に絡み合い、原因の解消や問題の解決を難しいものにしているといえます。

1)企業の目標やミッションが不明瞭

その会社が、どのような思想でどのような製品やサービスをどのような顧客に提供し、結果的にどのように世の中に役立っていくのか、という視点が欠如していることが多いように思います。

もちろん一定の利益を上げて会社を成長させ、社員の給与を増やし、株主に還元することは重要です。

しかし、ただ目標となる売上や利益の金額が提示されるだけであれば、何でもいいから利益を上げる、という発想になりがちで、数年単位の視点で、この会社はどこに向かっていくのか、という組織づくりや人づくりができないでしょう。

長い目で見ると、今ある構造的な問題や人員の意識の問題を変えることはできないということです。

2)各人の役割や責任範囲が曖昧

組織のミッションや目標が不明瞭だと、そこからブレイクダウンされて導かれるタスクやプロセスには何があり、そのためにどういう組織や役割を置くのか、誰が何をするのか、という組織やプロセスの定義やデザインが明確にできません。

そのため、境界の曖昧なもの、社長や役員の思い付きレベルのもの、さらに無駄な監査や形式的な自主チェックで生じた無意味な仕事まで位置付けの分からない、もっというと意味の分からない仕事も多く、それを手の空いている人や一任できる優秀な人(=だいたい仕事が集中する人)に無計画に割り振ったりするので、切れ目なくダラダラと作業するというのが、当たり前担っていたりします。

3)解雇規制があるため繁忙期も残業でカバーするしかない

日本は世界で一番成功した社会主義国家といわれますが、結局は福祉機能を政府が企業に肩代わりさせているという側面があります。そのため本来、利益共同体であるべき企業が生存のためのムラ的な役割もあり、何だか近隣と同じことをしていないと村八分になってしまう田舎の農村みたいな性格を持っています。

さらにもう企業が倒産するしかない、くらいの状況にならないと正社員の解雇が認められないというおそらく左翼系裁判官の出した判例があります(法曹界にはやや熱烈な左翼的発想を持った人がいて、5年雇い止めルールのように空想的社会主義で却って状況をややこしくしている例が見られます)

そのため一度正社員で採用してしまうと、相当無能であったり性格や精神に問題があったり、素行が悪くても解雇するのに相当な手間や金銭が掛かり、またマスコミに叩かれるという、法務リスク、風評リスクの懸念があります。

結局、企業は人手が足りなくても新規採用には消極的であり(リスク管理という意味で、それはそれで一定の合理性はあります)、その分の増えた仕事を現存の社員で回さないといけないという状況があります。

4)効率化より苦労をしていることが尊いとされる文化

編集人がAIの普及に微力ながら貢献したいと考えていること、また個人投資家として労働以外の所得のルート開拓に取り組んでいるのは、自分もサラリーマン時代に直面していた悩みでもあった、この問題意識があるからです。

ある目的があるなら、最短距離、つまりできるだけ最小限の手間や時間、コストでそこに到達するにはどうすればいいかを定義し、その合理性や可否を判断するのがマネジメントの仕事です。

ところが大目標が曖昧だと、結局このような各ビジネスエリアでの中目標や小目標も不明確なので、誰にでも分かるような定義ができなくなります。

合理的な内容や成果で示しても理解が得られないのであれば、そのうち、いかに汗をかいているように見えるかで勝負するようになります。

結果、声の大きい中隊長の合理性のない勇ましい意見や人員の身を削って特攻させる行為が偉いように見えてきて、終わりもなく勝ち目もないような戦さに突入していくのではないでしょうか。80年前の愚行をあちこちで小規模に繰り返しているということです。

まずはAIでの業務効率化を導入する際に、障壁となりそうな心理的、文化的バリアを論じてみました。

このテーマとその解決策については、継続的に考えていきたいと考えています。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。個人投資家としての活動や考察については、サブサイトのこちらをご覧ください。http://money.ai-life.info

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