自分の部署に他部署から若手の人が異動してきました。経営管理に関わる仕事なので、まずは内部のブレストみたいな打ち合わせはともかく、定例など公式な会議での議事録を書くようお願いしました。
すると、「会議を録音していいですか?」とのことでZOOMの録画機能で記録を取り始めました。そしてその日の午後いっぱいと、どうやら少し残業したようで、1時間の会議を何度も掛けて聞き直し、3時間くらい掛けて議事録を上げたようです。
それまでの部署では議事録をあまり取る習慣がなかったようで、「いやー大変ですね」とのこと。上がってきた議事録を見ると、どうやら録画を文字起こししたみたいで、昨日の議論が一字一句記されていました。
週に何度かの会議があり、それをこの調子で文字起こししていては他の仕事が止まってしまいます。早めに伝えておいた方がいいと思い、議事録の取り方を説明しました。
議事録の目的をあらためて考える
議事録には大きく分けて3つの目的があると思っています。
まず1つは説明責任を果たすこと。
経営者は株主や関連する役所、取引先や従業員、上場企業だと外部監査人へ適切に会社を運営していることを説明することが求められます。
その前段階として、一般社員は管理職へ、管理職は経営層へ、会社の運営を支える1つの部署として、ルール通りに仕事を進め、合理的で適切な根拠をもって意思決定し、自分の部署の役割や責任を果たしていることを説明する必要があります。
日々の報告や定例会議で報告していますが、後から過去のことを聞かれる場合もあるので、ルールに沿って合理的に物事を判断(意思決定)して仕事を進めていることを、適切に記録を残す必要があります。
次に結論とアクションを明確にすること。
よくいう「無駄な」会議では単に議論だけして何も決めず、したがって何も状況は変わらず、ということがあります。これは単なる「おしゃべり」ですが。
適切な会議では、何かに対応するための目標や方針が共有され、それを実現したり課題を解決するためのアクションが議論され、最終的に各人がそれぞれ何をする、という方向性がアウトプットとして出てくるはずです。
その結論を文字にして見える化して、ややもすれば面倒な行動を回避しがちなヒトという生き物に行動を促す意味でも、きちんと結論を明記した議事録は役立ちます。
最後に単純に「言った・言わない」のトラブルを防ぐ効果があります。関係者で議論して決めたのだからそれに沿ってやってくれよ、と思うこともあるのですが、残念ながら後から「言っていない」、「知らない」、「できない」と言い出す人が時折発生します。
まあ人は納得していないことには動きが鈍くなるし、さらに脳内で自己正当化して一層腰が重くなったりもするので、あらかじめ織り込んでおいた方がいいのですが。
トラブルとなった際には役員とか場合によっては社長とか上の人に背中を押してもらうことも必要になってきますが、きちんと議事録を残しておけば、相手にその義務がある根拠になります。
まず形式を整える
有効な話し合いをする場合、議事録は意思決定の証跡となるので、まずは適切なメンバーによって決められたことを示す必要があります。たとえば営業に関する施策が製造部門で決められていてはおかしい訳で、適切なメンバー=関係者によって議論されていることを示す必要があります。
またその話し合いが捏造でなく、実際に行われたことを示す(実在性)必要もあるので、いつ、どこで、誰が、何のために話し合いをしたのかを明記しないといけません。
言い換えると、「会議名」、「会議の目的」、「日時」、「場所」、「参加者+議事録作成者」を記載します。
スムーズな議事録のための3つのコツ
単にだらだらメモを取るのは、なかなかつらい作業です。議事録を効率的に作成するために注意すべき点として、(いろいろありますが)まずは以下の3つのコツをご紹介します。
まず、できれば会議中にノートPCなどでメモを残すこと。前述の新しく来た方は後で録音を聞き直すからいいや、と思っていたようですが、後から聞き直すのはかなり面倒だし、夜になると気力も落ちてきますw
そこで議論を聞きながらパソコンに議事メモを取っていくスタイルをお勧めします。キーボードが苦手な場合は、紙にメモを取っていくでも構いません。後からゼロから文字に起こすより、ラフでもいいのですでに記載している流れを修正したり加筆したりしていく方が圧倒的に楽です。
ずっとやっていると、議論に参加しながら手は勝手に要点をワープロに打ち込んでいる、なんて芸当もできるようになります(SEとかコンサル業の方とかは、普通にやっていると思いますが)。
次に大事なのは一字一句書き残そうとしないこと。多くの人の発言は、前置きとか補足とか脱線とか、かなり議論の本筋以外の情報を含んでいます。その方の主張をシンプルな表現に置き換え(リフレーズ)しながらメモに落としていくようにすると、効率よくメモを取れます。
たとえば本筋の前に、「すでに関係者の皆さんには釈迦に説法ですが」とか前置きを入れる人もいますが(自分の例です汗)、そこはキーボードを止めて一呼吸入れるタイミングだと思ってください。
結局、その人は何がどうだからどうだと考えているのか、と議論の骨子に注目すればよいのです。ただ、その人が使っていない単語、たとえば「心配している」というのを似たような「懸念がある」に置き換えるとかはしない方が、あとで言った・言わないのトラブルになりにくいと思います。できるだけキーワードはそのまま残しておくのがいいです。
たとえば長々と話をされても、
○○課長 リソース不足なので、進捗に懸念がある。大幅に遅れるようなら、外部委託も探すべきではないか。
のように要点だけにまとめればよいです。
もう1つ、コツとしてお勧めしたいのは、疑問とアクションに集中すること。
会議の目的は生産的な結論を出して、生産性の向上を実現するとか、課題の解消を図ることなので、その目的に対して役に立つ助言となるコメント、アクションを進めるに当たっての疑問や課題とそれに対する回答、そして最終的に誰が何をするのかが重要です。
その視点で参加者の発言を拾っていくと、重要な助言となるコメント、きちんと検討すべきポイントを指摘した質問や疑問、それに対する回答に集中すると、すっきりと分かりやすいメモが取れると思います。
ついでにどの人の発言が役に立っていて、どの人の発言は意味がないか、とかが見抜けるようになってきます。たとえば質問で聞かれている意図やポイントに、担当者がきちんと整合して回答しているのか、それともズレているのか、なんてことも意識してメモに残してみるのも面白いです。
まとめ
形式的には、いつ、どこで、何のために、誰が参加して会議をしたかは書いておく必要があります。誰がどのような権限でその議題を協議し、ある結論を出したのかの根拠となります。何より、仕事として実体のある活動をしていたという証明にもなり、説明責任を果たすことになります。
会議の種類によっては、政府主催の公式の会議のように速記録で一字一句残すべきものもありますが、通常の会社内部や取引先、委託先との会議においては、上記のポイントで、大まかな議論の流れと結論をシンプルに残せばよいかと思います。
つまり、何が目的か、誰が何を言ったかの概要、どういう観点でどこに懸念や課題があると疑問が出されたのか、それに対し誰がどう回答したのか、それにより、疑問はどう解消したのか、あるいはどこまではいいが、どこは依然疑問が残っているのか、そしてその議論のアウトプットとして、誰が、何を、いつまでにやるのか、を記録し、最後に出席者や関係者に共有しておく、というのを徹底するとよいかと思います。
記録を取る人は面倒ですが、議論の流れが掴めて、いい会議・悪い会議、生産的な議論・無駄な議論の見極めができるようになりますし、重要な事項をささっとメモや記録に残すスキルが向上するし、将来管理職になったり、コンサルタント的な職種に就くのに役立ちます。
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